働き方インタビュー

学生服リユース専門店『ゆずりば いちかわ』インタビュー

千葉県市川市にある学生服・学用品のリユースショップ『ゆずりば いちかわ』は、県内初の学生服リユース専門店として2018年にオープンしました。今回は『ゆずりば いちかわ』の代表の石垣さんにお話を伺いました。

 

ー『ゆずりば いちかわ』について教えてください。

ゆずりば(譲り場)は、卒業などで不要になった学生服を買取・再販売する「学生服リユース事業」を中心とした小さなお店です。

千葉県初の専門店として、2018年11月市川市にオープンしました。

取り扱い対象校は市川市内の幼稚園・小学校・中学校・高校と浦安市内の中学校。商品は学校指定制服、体操服、鞄などがあります。ご入学予定のお子様はもちろん、成長期真っ盛りで制服が合わなくなったお子様、急なお引越しで転入したお子様など、様々な場面でご利用頂いています。

学生服リユースを通じて、

①子育て世代の家計負担軽減
②メンテナンス作業から内職など柔軟な雇用の創出
③学校や地域の情報が集まるコミュニティスペース

この3点を理念として地域に根付く存在を目指しています。

 

ー引き取った学生服はどのようにして店頭に並ぶんですか。

引き取った学生服類は、専用洗剤などでクリーニングします。

その後は内職スタッフが細かなメンテナンスを行います。裾やボタンなどの補修を行ったり、毛玉取りをしたり、名前の刺繍取りやゼッケンもすべて手作業でほどきます。

アイロン掛けや個包装をして、次のお子様に気持ちよく着ていただけるよう丁寧に準備しています。

こういった内職スタッフは、子育て中のお母さんたちが中心です。自宅で自由な時間に作業を進めています。ご家族の介護をされながら、洋裁の得意な高齢者の方など、現在は5名の方にお願いしています。

 

ー『ゆずりば いちかわ』を始めたきっかけは?

結婚を機に東京から市川市へ引っ越してきました。育児と仕事の両立に苦労していた頃、ふと周りを見渡すと育児に限らず、親の介護、ご自身の病気や障がいと向き合って苦労されている方々と出会いました。

抱えているもののペースに合わせて働く場を作りたいと思ったのが最初のきっかけです。

また自宅周辺は高齢化が進み、シャッター街になっている様子を見て、昔は活気に溢れ、地域みんなで子育てしていた賑やかな風景に憧れを抱き始めました。

学生服リユース事業と出会ったのは長男の小学校入学がきっかけでした。市内で転居していたため、保育園から入学するのは長男一人だけ。在学生の保護者と出会えず、日中は仕事をしていたため情報収集の機会がなく、学校情報は事前に分かりませんでした。

結果として、説明会が開催される直前の2月に必要な学用品、費用、購入場所などを知ることになり、選択肢が少ない上に急な経済的不安を感じました。

中学校進学には制服代、塾代などこの先教育費は増えていく一方。

「お下がりできる場所」を作ってしまえばそれらが解決することに気づきました。

集まった学用品と卒業生からの学校情報は、お店を通じて次に必要なお子様へおつなぎすることができます。

前述の理念3点が結び付き、起業に至りました。

 

ーゆずりば いちかわを始める前はどんなお仕事をしていたんですか?

学生時代から人をつなぐ仕組みに興味があり、いずれチャンスがあれば起業してみたいと思っていました。

社会人としては人材派遣会社の営業職を経験、出産を機に退職し、簿記を取得。経理職を数社で経験し、企業経営を学びました。

学生時代のアルバイトは接客業が多く、アパレルショップ店員も少し経験があります。

 

ー起業のためにどんな勉強や準備をしましたか?

経理職を通じて、経営者の思想や会社の仕組みを学んだことが一番初めです。

学生服リユース事業の実現に向けては、資金調達のため起業スクールに通って事業計画書を練りました。

また肝心な学生服の在庫集めは、店舗を持つまでの半年間すべてお客様のご自宅へ出張買取に行きました。

在庫が集まるようになってからは、メンテナンス方法を検討、洗剤屋さんに洗剤成分について、汚れの種類や洗い方など教わりながら試行錯誤を続けました。

お店の広告宣伝についてはSNSやブログを活用しつつ、開店までにチラシ1万部を自分でポスティングしました。

商圏調査も兼ねていたので、市川市の白地図に配布日付と配布数を記録し、時々家族に手伝ってもらいながら根気よく続けました。チラシも貴重なので、必ずお子様のいる家庭を狙いたくて、自転車の後ろに子供を乗せる椅子があるかもチェックしましたね。

店舗立地もこの時に実際歩き回って希望エリアを決めました。

ー苦労したこと、大変だったことを教えてください。

長男の入学時に経験した通り、外部から学校情報を集めるのは大変でした。

学生服は学校によって異なりますし、体操服を中に着て行く、学年カラーがあるなど細かいことがあります。

これらはたくさんのお客様に質問を重ねて地道に集めていきました。こういった生きた情報は次のお客様へ大切にお伝えしています。

また仕入れは常に課題になります。在庫がないと販売できないので、開店当初はお断りすることが多く、頭を抱えていました。

現在もご自宅への出張買取は続けていますが、もうひとつの取り組みとして、同じ市川市内の店舗さんなどに回収拠点としてご協力頂いています。

「学生服・学用品提供ステーション」と言い、店舗から離れた場所を中心に、現在は12か所あります。

ステーションにお持ち込み頂いた学生服は、当店で定期的に引き取り、リユース品として再利用しています。

たくさんの方にお力添えを頂き、在庫数は前年比で2倍のペースで順調に増えています。

 

ー現在のコロナ禍において、活動の変化があれば教えてください。

小さなお店ですので、店内はマスク着用と同時に2組様までのご入店に限らせて頂いています。

また営業時間が16時までと短いため、どうしても週末にご来店が集中してしまいましたが、新たな試みとして、営業時間を後ろに倒した「夕方営業日」を週に一度設定しました。

学校帰りやお仕事帰りのお客様にご利用頂いています。

店舗販売をより安心してご利用頂けるよう、今後も柔軟に対応したいと思います。

 

ー今後挑戦したい事があれば教えてください。

お客様から「卒業したけど、まだ思い出に取っておきたいって言うんです」と聞くことが多く、「アップサイクル」に興味を持ちました。

使い終わったものに付加価値をつけて提供する仕組みです。

特にご要望の多かったランドセルから手掛け、近所の革工房と共同で「ランドセルリメイク事業」を始めました。現在は新たに幼稚園の園服をミニチュアにリメイクするサービスも開発中です。リメイク事業は今後WEBショップも整備していきたいと思います。

今度は新たな拠点として「つくりば」を作りたいと思っています。

学生服の在庫がどんどん増えていますので、倉庫兼作業場です。

加えてお茶会が出来るスペースを設け、そこから新たなコミュニティが広がることを期待しています。

少し規模が大きくなりますが、近所に個人商店を呼び戻したい思いもあります。シェアスペースを作って事業のスタートを応援するとか、事業承継できずに困っている方と新規開店したい方をマッチングするなどもやってみたいですね。

このコロナ禍でより地元を見直す機会になっています。「場」がどんどん増えて、市川市が住んでも営んでも魅力的な街になる関わりをしていきたいです。


 

※今回は新型コロナウイルス感染拡大防止のためメールでインタビューにお答えいただきました。
お忙しい中、ご対応いただきありがとうございました!

 

ゆずりば いちかわ

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