インタビュー働き方

俳優&ヨガインストラクター 遠山さやかさんインタビュー

舞台俳優として、またヨガインストラクターとしても活躍する遠山さやかさん。大学卒業後、劇団四季に入団。ミュージカル『キャッツ』で舞台デビューを果たしました。劇団四季を退団後、ヨガインストラクターに転身。一度は舞台から離れるも再び舞台に立ち、現在は舞台俳優そしてヨガインストラクターとして活躍の場を広げています。今回は遠山さんに俳優を目指したきっかけやヨガとの出会いについていろいろとお話をうかがいました。

 

ー遠山さんはどのような活動をされていますか?

俳優とヨガインストラクターをしています。

俳優業は主に舞台を中心に活動しています。
最近の出演作は、
NHK宇都宮放送局主催の朗読劇『すっぴん』
コロナ禍で生まれたオンラインのミュージカル劇的茶屋『謳う芝浜』
現在はミュージカル『マリー・アントワネット』のお稽古中です。(※インタビュー当時)

 

ヨガインストラクターのお仕事は、世田谷のヨガスタジオでレギュラーレッスンを担当しています。その他に、代行のみで登録しているスタジオが都内に7ヶ所あります。あと、このコロナ禍で自宅からのオンラインヨガレッスンを始めました。

 

ー俳優を目指したのはいつ頃ですか?

俳優を目指したのは大学生の頃でした。

でも小さな頃から音楽に合わせて踊るのが大好きで、(俳優など具体的な職業としては考えていなくても)「踊りたい」という気持ちはずっとありました。スーパーのBGMや頭の中で流れている音楽に合わせて、人目も気にせず踊り出してしまうような子供でした(笑)

母は勉強そっちのけで毎日踊り狂う私を見て「このままでは芸事の世界に行ってしまう!」と危機感を抱き、「絶対にダンスは習わせないでおこう!なるべく芸事からは遠ざけよう!」と心に決めていたそうです。母は芸事の世界にあまり良い印象を持っていませんでした。母の両親は社交ダンスのダンサーで、プロとしてペアを組んでいました。祖父は世界選手権の日本代表として審査員をしているような人でしたから、母は小さな頃からきらびやかな世界の裏側を見て育ちました。母の目には、きれいごとではない厳しい世界が見えたのでしょう。

芸事から遠ざけたかいあって、私は真っ当に大学へ進学しました。大学ではスペイン語を学んでいました。しかし大学2年のある日、私は語学漬けの生活で、はたと気づいたのです。「私は語学をやりたいのか?本当は何がやりたいんだろう?」周りが就活セミナーに行くなか、私は「なんか違う気がする」とセミナーに行かず自問自答の日々を送っていました。

「ダンスを学びたい!」という本心にたどり着き、「外国語大学だからこそエンターテイメントの本場アメリカの大学に交換留学できないか?そこでダンスを学びたい!」と思い、大学教授に相談しました。しかし「スペイン語学科だからアメリカの大学との交換留学やダンスを学ぶなんてそんなプランはない!」と言われてしまいました(そりゃそうです(笑))
そのとき教授が「好きなことを仕事にすると嫌いになってしまうから、私は好きなことは趣味に残しておいて、別のことを仕事にしているの。そういう生き方もあるのよ。」と優しく教えてくださいました。

ただその言葉は私には逆効果でした。メラメラと心の底から「私にそんな生き方は無理だ!好きなことを嫌いになるまでできたら本望だ!」という思いが沸き上がりました。
「よし!ダンスを習おう」と思い立ち、大学に通いながらジャズダンスのレッスンに通い始めました。子供の頃から踊るのが好きだったものの勝手に踊り狂っていただけですから、もちろん基本的な技術もなく振りも全く覚えられず、最初は発表会に出ることすらできませんでした。それでも私の情熱は消えず、将来の職業について考えていました。

あるとき、子供の頃に祖父に連れられて観た『キャッツ』、小学校の芸術鑑賞会で観た『エルリック・コスモスの239時間』、高校3年生のときにクラスメイトに誘われて観に行った『クレイジー・フォー・ユー』と心にずっと残っているものは全て劇団四季の作品だと気づき、「よし!劇団四季を目指そう!」と思いました。

 

ー俳優としてデビューするまでの道のりを教えてください。

劇団四季を目指そうと決めてから、たまたま元劇団四季の方が講師をしているミュージカル養成スタジオを見つけました。大学に行きながらそのスタジオにも通うことにしました。
そこではジャズダンスの他、バレエやタップ、歌やミュージカルの基礎が学べました。バイトのお金は全てレッスンに使いました(笑)。そしてその2年後、劇団四季の研究生になることができました。

研究生はプロとして舞台に立つまでに1年間レッスンを受けます。中間試験と最終試験をパスした人だけがプロの舞台に立てるのです。しかし私を含む4人だけは入所4ヶ月で作品のアンサンブルに配役されました。
私は喜びに溢れてお稽古に精を出していました。さらにそこから私だけ抜擢され『キャッツ』の主要キャストに選ばれました。これが大変なことでした。嬉しさは最初だけでそこから地獄のようなレッスンの日々が始まり、なんとかその役でプロデビューすることができました。

ーヨガインストラクターを始めたきっかけは?

劇団四季でのデビューは、経歴だけを見るととても順風満帆のようですが、毎日が苦しく、辛く、次第に本当にやりたいことなのか分からなくなりました。自分の才能や感覚を疑い、自分で自分を追い詰めていました。向上心が行き過ぎたのかもしれません。プロを目指してレッスンしていた、かつての自分の方が輝いていたと感じました。
もちろん劇団四季での素晴らしい経験の数々には感謝の気持ちでいっぱいです。しかし当時の私は目標を見失ってしまい、徐々に「自分には向いていない」とネガティブなことを考えるようになりました。

「もし辞めたらどうする?」という思いが頭をよぎり、それまで就活とかもせず、ずっと舞台一本でやってきたから、一体何をやったらいいんだろうと考えるようになりました。そう考え始めていたとき、劇団内のレッスンでヨガのクラスがあり受講しました。それがヨガとの出会いです。疲れ切った心も体もほぐれるのを感じました。最後の「シャヴァーサナ」と呼ばれる寝転ぶポーズは、ものすごく気が張ってるときなのにふと寝たりして(笑)「なんだこれは!」と衝撃が走りました。

ヨガは「バランスのとれた状態」という意味。「つながり」を意味する言葉で、足りないものが補われるんです。筋力が足りない人は筋肉がつくし、柔軟性が足りない人は柔軟性が身につく。リラックスできて運動不足の人はトレーニングにもなります。

芸事以外で初めて「学んでみたい」と思えるものに出会いました。

劇団四季を退団後、ホットヨガスタジオで働き始めました。そのスタジオでは無料でインストラクターを養成してくれていて「ヨガインストラクターが自分に向いているかどうか、やってみてから判断しよう」と思い、オーディションを受けました。

ヨガインストラクターの仕事は楽しく、ヨガの世界に魅了されていきました。

 

 

 

ー再び舞台に立つようになったきっかけは?

劇団四季を退団したときは「もう一生舞台に立たない」と心に決めていました。心が離れてしまって体もついていかなくなって「自分のやることじゃない」と思っていました。当時は苦手意識から音楽も聴いていられない、カラオケにも行けない、鼻歌すら歌えないような状況でした。

しかし退団してから約1年が経った頃、吉原光夫、高橋卓士らが立ち上げた劇団『Artist Company 響人《ひびきびと》』の旗揚げ公演に出演することになりました。それも最初は嫌々でした。ヒロインが不在で頼まれて、やるしかなかったんです(笑)

このとき初めて「ストレートプレイ」つまり歌のない舞台に立ちました。復帰するつもりは全くありませんでしたが、言葉だけで繋ぐお芝居がとても新鮮でした。劇団四季で出演した『キャッツ』や『エビータ』などの作品は、いずれも歌だけでお芝居が繋がっているミュージカル作品です。
言葉で繋ぐお芝居に「こういう感覚になるんだ」と、何かこみ上げるものを感じました。

その後もずっと舞台は避けていましたが、お芝居のワークショップに参加したりと、少しずつ再び舞台と関わり始めました。しかし舞台に立つつもりなんてありませんから、ワークショップは遊びに行く感覚でした。それがかえって良かったのかもしれません。お芝居は英語で「play」、つまり「遊ぶ感覚」を忘れてはいけないのです。その点、肩の力が抜けた状態が良かったのか、今度はだんだんお芝居に魅了されていきました。

歌は相変わらず歌っていませんでしたが、お芝居とヨガが私の生活にトキメキを与えてくれるようになりました。

 

 

ー現在は俳優とヨガインストラクターのお仕事、どちらがメインですか?

俳優とヨガインストラクター両方の肩書きがあります。どちらもメインのお仕事「二足のわらじ」です。

ヨガもお芝居も、結局は自分自身と向き合う作業で、やればやるほど自分自身を知ることになりました。
俳優は「自分じゃない人間の空気をまとう」
ヨガは「無理のない自分自身に戻ること」
この二つで今の私はちょうどバランスが取れているように思います。

劇団四季での経験が私に「負けない強さ」を与えてくれました。あの経験のおかげで今ヨガの先生と舞台俳優「二足のわらじ」の毎日を楽しめていると思っています。

少しずつ舞台に立つようになると、歌とももう一度向き合わざるを得ないという心境になり「ミュージカルにも再チャレンジしたい」と思い始めました。劇団四季退団から7年が経っていました。今では再びミュージカルの舞台に立つようになりました。

 

 

ー俳優とヨガインストラクターの両立は大変ですか?

舞台稽古のスケジュールは稽古の進み方によってどんどん変化します。翌日のスケジュールが未定という場合もあり、舞台期間中は毎週固定でヨガレッスンをするのは難しいです。
現在、固定のレッスンは週2回のみ、あとは「代行専任」として代行の要請があったときのみ行くようにしています。舞台のお稽古や本番期間中はヨガのレッスンをお休みして、固定のレッスンは他の先生に代行をお願いしています。
インストラクターのオーディションを受けるときは「私は舞台俳優をしているので、舞台期間中はレッスンをお休みします。それでも良ければレッスンさせてください。」と最初にお伝えするようにしています(笑)

当初は代行専任という形は取っていませんでした。しかし舞台の仕事が増えるにつれて、舞台でヨガのレッスンをお休みするたび、生徒さんたちを複雑な気持ちにさせてしまっていることを知りました。生徒の皆さんは私の俳優業も応援してくださり、舞台も観に来てくださるのですが「先生が舞台上でキラキラされていて嬉しい反面、先生を舞台に取られたような気持ちになりました」と複雑な心境を話してくれました。「これはなんとかせねば!」と思い、代行に専念することにしました。

すると、それまで舞台のたびに休んでしまい、生徒さんたちを残念な気持ちにさせてしまっていたのが一転、たまに代行レッスンでスタジオに行くと「先生に来ていただけて嬉しい!」と喜んでいただけるようになりました。
私が代行で入っているところを探して来てくれる生徒さんもいて、代行にして良かったなと思っています。
今の私には、このスタンスが合っているようです。

「代行専任」でヨガインストラクターのオーディションを受ける人なんていないんです。だからスタジオのオーディションで「代行で登録したいんです」というと驚かれてしまいます(笑)
でもどこのスタジオも、インストラクターの体調不良や怪我など様々な理由で、急遽代行が必要になる場合があるんです。私も舞台に立つたび代行を頼んでいたので、すごくよく分かります。「代行だけの先生がいたらいいのにな」とずっと思っていました。今「代行専門インストラクター」の道を切り開いています(笑)

 

ーコロナ禍において活動の変化などがあれば教えてください

舞台稽古ではマスク着用は当たり前。稽古開始前や本番前にPCR検査を受けて、全員の陰性を確認しています。
稽古中のこまめな換気や手洗いうがいに消毒、かなり徹底しています。

昨年出演した朗読劇『すっぴん』の現場でも、ずっとマスクを着用したまま稽古をしていましたし、本番も舞台袖までフェイスシールドを着用していました。初共演の役者さんはギリギリまでちゃんと顔を見たことがありませんでした。田中美里さんはじめ素敵な共演者の皆さまとは初対面でしたから、本番前のリハーサルでマスクを外すのが少し恥ずかしく感じ、改めて初めまして!という不思議な感覚でした。

このコロナ禍で、生の舞台は次々と延期や中止になっていましたから『すっぴん』は久しぶりの生の舞台でした。当日お客さまの拍手や笑い声や手拍子にグッときて、生の舞台の楽しさを改めて実感しました。

 

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お芝居をする、歌う、踊る、というお稽古の場では、息がしづらく表現も届きにくく、マスクは本当に邪魔ですが仕方ありません。
マスクを取ってお稽古できる日が来たときには、役者達の肺活量や体力、お芝居のキャッチボールの速さなどがもの凄くレベルアップしていそうです。

またオンラインでの舞台が生まれたのも、一つ大きな変化だと思います。昨年出演した『劇的茶屋』というオンラインミュージカルは、アメリカに住む友人や介護施設にいる祖母にも観てもらうことができました。祖母は歩くことが難しくなっていて今は施設にいます。随分と私の舞台も観られていませんでしたが、施設の方が大きなスクリーンに写してくださって、みんなで観てくれたそうです。

 

ヨガもスタジオレッスンは、換気や掃除、消毒の徹底と本当に大変です。インストラクターはマスク着用、レッスン中は生徒さんに背を向けて鏡越しに話します。生徒さんの身体に触れてポーズを直す「アジャスト」も禁止、基本鏡越しに言葉のみで誘導しなければなりません。

今はオンラインレッスンが主流になっています。私もオンラインヨガ教室を始めました。北は北海道、南は鹿児島から生徒さんが来てくれています。

 

ー今後チャレンジしてみたいことはありますか?

 

映像のお仕事にもチャレンジしてみたいです。元々映画が好きなのですが、自分が画面に映ることに抵抗がありました。しかしコロナ禍でオンラインのお芝居をする機会があり、画面に映ることへの抵抗がなくなりました。

海外に住んでみたいとも思っています。
以前ニューヨークに行ったとき、スーパーで流れている曲に合わせていつも通り踊っていました。実は子供の頃だけでなく、今でも音楽が聞こえると踊り出しちゃうんです(笑)
日本だとちょっと変な目で見られることもありますが、ニューヨークでは「ヘイ!ナイス!」みたいに声をかけてくれたり、一緒に踊ってくれたりして。そういうところがすごくいいなと思いました。

今はまだできませんがコロナが落ち着いたら、海外オンラインヨガ教室をやってみたいなと思っています。「今日はバリ島からお届けします」みたいに、世界各地からオンラインでレッスンをしたら面白いかなと考えています(笑)

海外公演もしてみたいです。
『We Are The World』みたいな、文化や宗教や言語などいろいろな壁を超えて共感できるものに憧れがあります。
人それぞれが持っている魅力や波動みたいなもの、それに音楽。それらは文化や言語の壁を越えると思っています。今のコロナ禍では難しいかもしれませんが、それでも夢は大きく、人生何が起こるか分かりませんから、そんな機会を常に狙っています。

 


 

※今回は新型コロナウイルス感染拡大防止のためメール及びリモートでインタビューにお答えいただきました。
お忙しいなか、ご対応いただきありがとうございました。

 

遠山さやか / 舞台俳優・ヨガインストラクター

主にミュージカルに出演 元劇団四季
ヨガ指導歴13年 ハワイにてRYT200修了
オンラインヨガ開催

twitter
https://twitter.com/shayabom

Instagram
https://www.instagram.com/sayaneneyoga/

ベストプリントスタッフ

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