アートインタビュー

ジャズピアニスト 伊澤知恵さんインタビュー 前編 『挫折を乗り越えて、ピアニストになるまでの道のり』

ジャズピアニスト、作曲家、そしてピアノ講師として活躍している伊澤知恵さんは2児の母でもあります。
今回は、伊澤さんにジャズとの出会い、ピアニストとしての活動、ピアノ教室を始めた経緯、そして母になってからの活動についてお話を伺いました。

 

ジャズとの出会いについて

 

もともとクラシックピアノを習っていたと聞きましたが、ジャズピアノを始めたきっかけは?

 

伊澤さん きっかけは、音大付属高校、音大での挫折なんです。
もともと、地元ではピアノが上手な子っていう感じだったんですけど、音大付属高校、音大に進学した時、周囲のレベルの高さにプチ挫折を味わったんです。

 

それで、大学生の時はバイトばかりしていて、自分がピアニストとして活動するとは夢にも思ってなかったです。「私なんて、とんでもないです」って感じでした。
青山にあるレストランバー『CAY』でバイトをしていたんですけど、そこで毎週いろんなイベントを開催してたんです。ジャズやテクノ、ノイズ、ヒップホップ、民族音楽とか、いろんな音楽に触れ合う機会があって、ジャズとの出会いはその時だったのかなと思います。まだいろんな音楽がある中にジャズがあると思っている程度で「これだ !」って思った訳ではないんですけどね。

 

バイトはすごく楽しくて、卒業後もフリーターとして仕事を続けていたら職場の方から「社員にならないか」ってお誘いがきたんです。でも、このままでいいのかなって思いがどこかにあって、バイトを辞めて、当時アメリカに留学していた友人に2週間くらい会いに行くことにしたんです。

 

友人に会いに行くために、仕事をやめたんですか!

 

伊澤さん そうなんです。その友人は、大学時代の友人で、音大を首席で卒業する様なすごく優秀な子なんです。アメリカの大学でもすごく優秀で、その時に友人のアメリカでの活躍を見て「やっぱり私もピアノ弾きたいな」って思ったんです。

 

アメリカでは演奏とかもしたんですか?

 

伊澤さん いえ、私は本当にただ遊びに行っただけなので、友人の通っている大学に連れていってもらって、遊びで弾いたりはしたんですけど、それだけで。でも、その友人を見て、私はやっぱりピアノが好きだってわかったんです。

 

それで帰ってきて、何でもいいから音楽に関わる仕事をしようと思って、演奏ができるような仕事とかを探しました。音楽教室とかウェディングのオルガニストとか。

 

そんな時、たまたま求人雑誌でジャズ特集をしていて、その時はまだジャズは聞いたことがある程度で、全然ジャズのことを知らなかったんですけど、その求人雑誌に掲載されていたお店に手当たり次第履歴書を送ったんです。それで、唯一返信が帰ってきた新宿の『Jazz Spot J』というライブハウスでバイトをすることになったんです。

 

まだ、その時は全然自分で弾きたいなんて思ってなくて、ただ聞きたいというか、触れていたいという思いだったんですけど、そこでジャズを聞いて衝撃を受けたんです。それまでイベントでDJがかけるジャズとかは聞いてたんですけど、生演奏ははじめてだったんです。

 

しかも、普通のおじさん達が(笑)プロじゃないけど、好きでやってる社会人とかがセッションしてて、それがすごくかっこよくて「私は音大まで行ったのに、何にも弾けない、この人達みたいに弾けない」って思って、それがすごく衝撃で、悔しくて。そこからジャズにハマって、極めたくて、研究を始めたんです。

 

研究ですか?!

 

伊澤さん ジャズって年代によって全然違うし、弾く人によっても全然違うから、誰かに習いたいなって思ってたんですけど「この人だ!」って思う人に出会うまでは習うのをやめようって思ってたんです。それまでは、自分で研究していました。

 

そんな時『Jazz Spot J』に演奏に来た嶋津健一さんに出会って「この人だ!」って思ったんです、まさにビビビッて感じでした。その場で「弟子にしてください!」って直談判して、そしたら「じゃあ、今度おいで」って事になりました。

 

たまたまバイト先に来た師匠に出会って、その場ですぐ弟子になったんですね。

 

伊澤さん そうなんです。それで後日、レッスンに行ったんですけど、突然「とりあえず何か弾いてごらん」って言われちゃって。「いやいや、弾けませんー」みたいな(笑)
その弾き方を教えてほしいのに、最初から弾きなさいなんて言われても全然弾けなくて。師匠は結構スパルタでした。

 

後から聞いた話なんですけど、師匠は早い段階から私に可能性を感じてくださって、全然初心者なのに最初からプロに育てるって思ってくれていたらしいんです。ちょうど同じ時期にもう一人弟子がいて、師匠は「あの二人はプロにする」って周囲の人たちに言ってたみたいなんです。もう一人の子も今はプロになってバリバリ活躍してるんですよ。

 

だから最初の方はすごく厳しかったんです。私は師匠がそんな風に思ってくれている事を知らなかったから「なんでこんなに大変なんだろう」なんて思ってました。それでもレッスンはすごく楽しかったです。

 

そうだったんですね。

 

伊澤さん そうなんですよ。大学時代以上に練習しました。宿題の量がすごくて、人生で一番練習してたと思います。師匠の自宅でジャズの基礎をみっちり教わりました。プロのドラマーさんとかベーシストさんを呼んでくれて、セッションの練習をしたりして、すごくいい経験でした。

 

修行の期間はどのくらいだったんですか?

 

伊澤さん 4〜5年くらいですね。最後の方はジャズのティーチングメソッド、ジャズを人に教える方法とかも教えてくれました。師匠がライブを企画してくれて、私たち弟子2人のためにライブを開催してくれたり、師匠のライブや師匠が海外アーティストと共演する時に同行させてもらったり、様々なプロの現場を見せてくれて、本当にありがたかったです。

 

 

前編はここまで。
後編では、ピアニストとしてのスタートから、結婚・出産を経て、現在の活動に至るまでのお話をたっぷり伺いました!

ジャズピアニスト伊澤知恵さんインタビュー 後編 『ピアニストとしてのスタート、そして母になった今』

アンテナ編集部

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