紙の原料は主に木材です。しかし木材以外を原料とする紙もたくさんあります。
近年、環境問題への関心の高まりにより木材を使わない非木材紙が注目されています。
紙の原料の変化
紙は紀元前2世紀頃に中国で誕生しました。
19世紀にヨーロッパで木材からパルプを作る技法が確立されるまで、麻・樹皮・竹などをさまざまな植物の繊維を使って紙が作られていました。
また綿や麻などで作られる古布や古網も紙の原料として重宝されました。今ではほとんど見られませんが、素晴らしいリサイクルシステムですね。
竹紙
竹を原料とした紙。
アジアに広く分布する竹、昔から各地で竹紙が作られていました。
日本における竹林問題
「竹害」という言葉があるくらい日本における放置竹林問題は深刻な状態にあります。
日本の放置林問題
日本では現在、手入れが行き届いていない放置林が問題となっています。
日本の森林の多くは人工的に植樹された人工林です。人工林は定期的に手入れをしなければ土砂災害の危険があります。
植樹だけが森林保全ではありません。適切な伐採を行うことが森林保全に繋がります。
適度に木を切ることで
- 周囲の木が根を広げる
- 地面に光が届き、下層植生(背の低い木や植物)が成長する
ことができます。
しっかりと伸びた木の根や下層植生が土砂の崩壊を防いでくれるのです。
間伐などについて下記記事で紹介しているので、ぜひ合わせてご覧ください。
国内の竹林面積は年々増加しています。これは繁殖力の強い竹が放置林でその範囲をどんどん広げているからです。
放置竹林の問題点
- 広葉樹など他の植物を枯らしてしまう
- 生物多様性の崩壊
- 農村部での鳥獣被害
繁殖力の強い竹が放置林に侵食すると、他の植物を枯らしてしまいます。他の植物が阻害され竹ばかりの森林になると、そこに生息する動物にも影響を及ぼし生物多様性の崩壊に繋がります。
竹の侵食により山のコナラ(どんぐりの木)が枯れてしまう。
↓
山のどんぐりを食べていたイノシシが食べ物がなくなって人里におりてくる
という形で、農村部での鳥獣被害をもたらす可能性もあります。
竹と日本人の共生関係の崩壊
竹は日本各地に生息しおり、古来から日本人の生活に欠かせない存在でした。
プラスチック製品が普及する以前は、多くのものが竹でできていました。そのため竹材調達のため定期的に適度な伐採が行われ竹林の管理に繋がっていたのです。
しかし竹の需要が減少に伴い、竹林が管理されず放置されるようになりました。竹林は周囲の森林や里山に侵食を進め被害をもたらしています。
プラスチックという代替品の登場によりたった数十年で、1000年以上も続いた竹と日本人との共生関係が崩れてしまったのです。
竹は繁殖力が強く、驚異的なスピードで周囲に侵食を進めるやっかいものもようにみえますが、1000年以上前から近代まで日本人は竹に大きな恩恵を受けていたことを忘れてはいけません。
国産竹紙が森林保全に繋がる
つまり、国産竹紙を使うことが森林保全に繋がるということです。
- 日本各地にたくさん生えている
- 切っても切ってもどんどん生えてくる
- 紙が作れる
こんな好条件が揃っているのに竹紙があまり普及していないのはなぜでしょう?
それは竹の中が空洞であるために運搬時の効率が木材と比べて悪いからです。
国産竹紙を使用した商品や印刷用紙はありますが、やはり他用紙と比較すると高価になってしまいます。
しかし竹紙の使用は大きな意義があります。
国産竹紙を使うメリット
- 環境保全につながる
- 国産材の使用でCO2削減
- 放置竹林問題の改善
さいごに
以上、『「竹紙」の利用が森林保全につがなる理由』についてご紹介しました。
環境に配慮した印刷物を作りたいときは、ぜひ竹紙の使用を検討してみてください。
また、竹紙以外にもさまざまな形で環境に配慮した印刷物を作ることができます。
環境に配慮した印刷物作りについて下記で紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。