現在、日本人の約1/4がスギ花粉症だといわれています。
私も10年くらい前から、春になると鼻がいつもムズムズして目がかゆくなります。でも「花粉症ではないんだ」と自分に言い聞かせ続けています。
新たな国民病「花粉症」
2000年以降から「花粉症」という言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、1990年代以前はあまり耳にしなかった気がします。
でも昔から花粉症の人はいたんです。私の祖母は50年以上前に「春先になると風邪じゃないのにくしゃみが出る」と悩んでいたそうです。この頃はまだ花粉症が知られていなかったんですね。
それにしても、どうしてこんなに花粉症の人が多いのでしょう。
花粉症患者が増えた理由の一つは「花粉の増加」とされています。春になると昔よりもたくさん花粉が飛ぶようになったんです。
その他にも「大気汚染」や「食生活の変化」なども要因と言われていますが、今回は「花粉の増加」に注目してみたいと思います。
日本のスギ林
日本は森林の18%がスギ林。国土の2/3が森林なので、国土の12%がスギ林なんです。
考えただけでくしゃみが出てきそうです。
戦争と森林
では、なぜ日本にはスギ林がたくさんあるのでしょう。
それは日本が経験した戦争が関係しています。
「花粉症と戦争」一見無関係のようですが、実は花粉の増加と戦争には関係があるようなんです。
戦中には軍需物資として木材が使われ、戦後の復興にも大量の木材が使われました。
そのために日本の森林はどんどん伐採されてしまいました。木がなくなってしまった山では台風等の大雨によって大規模な土石流や地滑りが起きました。
その後、1950年頃から全国で植樹が行われ、中でも建材や船材などで活躍するスギがたくさん植えられたのです。
スギは、
・まっすぐ伸びる
・軽くて丈夫
・腐りにくい
・成長が早い
などなど木材としてとっても優れた木なんです。
その後も高度経済成長期(1955年〜1972年)頃をピークに徐々に植樹の数は減っていますが、今でも毎年植樹が行われています。
さて、ここで少し疑問を感じる人がいるかもしれません。
1950年から植樹活動が始まったのに、どうして2000年以降に花粉症が大流行したのでしょう。
スギは30歳で一人前
スギは樹齢25〜30年頃から雄花をたくさんつけはじめ、その後は毎年花粉を飛ばします。
戦後全国的に植樹活動が盛んだった1950〜1970年頃に植樹したスギは、全国的に花粉症が流行りだした2000年頃に「樹齢30〜50年」になりました。
つまり、戦後に植樹したスギ林が、2000年頃に樹齢30年に達し、花粉を飛ばすお年頃を迎えたわけなんですね。
スギは樹齢30年前後で花粉を出し始めてから100〜200年以上花粉を出し続けると言われている様ですが、正確な事はわかっていないみたいです。
樹齢100年を超えるスギも存在していますが、数が少なくて正確な調査ができていないのかもしれません。ちなみに縄文杉は花粉を出さないのかなと思って調べてみましたが、答えを探すことができませんでした。
スギは大昔から日本人に欠かせない大切な木
花粉症の原因として厄介者の様に思えるスギですが、加工しやすく木材としてとても優れた木で昔から日本人に愛され続けてきました。
日本人は縄文時代からスギを使って舟を作り、1500年頃(室町時代)にはスギの植林を始めたそうです。
だからこそ日本の未来のために戦後スギがたくさん植えられたんですね。
しかし、植樹した木が伐採時期を迎える頃には、家庭燃料が薪からガスや電気に変わり、建物はコンクリートに変わるなど日本は大きく変わったため、木材の需要が大幅に減ってしまったんです。
その結果、伐採時期を迎えているのに伐採されずにそのまま放置されたスギが増えてしまいました。
私たちにできること
それは「国産材」を積極的に使うことです。
国産材の利用拡大は、スギの伐採に繋がり、花粉の減少に繋がるということです。
さらに放置された山の整備、森林保全に繋がります。
国産材というと高額なイメージがありますよね。
しかし、国産材の需要の増加が価格の低下に繋がりますので、みんなで少しずつでも国産材を使うことがとっても大切です。
印刷物に国産材を使った紙を取り入れる
国産材100%の紙はあまり普及していませんが、原料の一部に国産の間伐材を使った紙は少しずつ普及しています。
価格もそこまで高くなく、手軽に取り入れられる価格の用紙も多くあります。
ベストプリントで取り扱っている間伐材紙の原料の「間伐材」は全て国産材です。花粉症の方、国産材の利用に興味を持ってくださった方はぜひチェックしてみてください。
参照:
花粉症情報サイト|環境省
スギ・ヒノキ林に関するデータ|林野庁
まるごと発見!校庭の木・野山の木 7 スギの絵本
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